大みそかの第75回NHK紅白歌合戦に出場する歌手、星野源さんが曲の変更を発表した12月26日、ネット交流サービス(SNS)では「キャンセルカルチャー」が一時トレンド入りした。特定の人物や団体などの過去の反社会的な言動などを問題視することを指す。今回は星野さん自身の言動ではないところでキャンセルカルチャーが起きた。理由を専門家に聞くと――。 【写真】第75回NHK紅白歌合戦 初出場者会見 星野さんは当初、今回の紅白で「地獄でなぜ悪い」を歌う予定だった。星野さんの公式サイトによると、「今回の歌唱楽曲は『アーティストの闘病経験を経て生まれた楽曲で、いま苦しい時代を生きる方々を勇気づけてほしい』という、紅白制作チームからの熱意あるオファーを受けて選定された」という。 「地獄で……」は星野さんも出演した2013年公開の同名映画の主題歌で、監督を務めた園子温氏は後に性加害疑惑が報じられた。23日の曲目発表以降、SNSなどでこの曲に対して、「紅白であの曲を歌うことで、性暴力という地獄を想起せざるを得ない当事者がいる」「紅白に選曲されるのグロすぎて絶望する」など、批判的な声が上がっていた。 インターネット上の「炎上」に詳しいニッセイ基礎研究所の広瀬涼研究員は「性加害は許されるべきではないという価値観がここ数年、より強まっている。(楽曲と映画の)タイトルが同じであり、『連想させる』ことが大きく影響した」とみる。その上で「昔なら電話のクレームだったのが、たくさんの反響が可視化されて世論化する時代になった」と語る。 NHKは26日になり、星野さんの曲目をデビューアルバムに収録されている「ばらばら」に変更することを発表。「曲目発表後の反響を受け、あらためて紅白制作チームとアーティストサイドで協議を行い、番組全体の構成や演出面などから判断」したと説明した。星野さんも公式サイトを通じ、「オファーの意図から離れ、真逆の影響を与えうるのであれば、それはオファーを受けた私たちの想いに反してしまいます」としている。 この判断に対してSNSでは見方が割れた。「攻撃的なクレーマーに屈して変更させられたのではなく、ちゃんと時間を使って問題点について考え、妥当性があると判断した上で『変えた』」として、キャンセルカルチャーには当たらないという意見があった。一方で、「過度なキャンセルカルチャーは多くの人の楽しみも奪うってことも考えた方がいいとは思う」「行き過ぎたキャンセルカルチャー」といった反応も見受けられた。 広瀬氏は今回の件について「園監督に対するキャンセルカルチャーが沸き起こった結果、星野さんが曲目を変更することになった」と総括。「誰から見ても完璧でないと大なり小なりのハレーションが起きてしまうのがSNSの特徴。相互監視社会となる中で、今後も人々から容認されない言動や行動はキャンセルカルチャーとして表れていくだろう」と話す。
*******
****************************************************************************
*******
****************************************************************************